会員のマナーと危機管理
(公社)全日本アーチェリー連盟の会員(競技者・指導者)マナーと危機管理の基本的な考え方

本連盟における会員のマナーと危機範囲とは「会員の安全」と「健全なスポーツ活動」であり、また支部活動・会員同士の交流拠点での事故発生時対処方法等が考えられます。これら様々な要望に本連盟として、さまざまな要因が関わりあっています。そのため、あらゆる場面で危機が生じることになり、以下のようなものが考えられます。

  • 練習中事故
  • 競技会中の事故
  • 活動地域/近隣とのトラブル
  • 競技ルールの違反
  • 体罰
  • 個人情報の漏洩
  • その他
Ⅰ.安全確保とアーチャーが守るべきマナーについて

アーチェリーの危険性を常に認識しいかなる環境でも安全対策を考え安心して参加できる競技スポーツを確立する必要があります。そのためには加盟団体・関係機関が危険防止策を定めた上で、定期的な講習会を実施し会員の環境を守る必要があります。

具体的内容
  • 安全規定 アーチャーの安全マナー
  • 競技規程 第9章(行射の管理と安全)
  • 本連盟のホームページ「安全について」参照(安全のために・アーチャーの安全マナー・事故防止に向けて・安全宣言)

危険をいち早く発見して、事件・事故の発生を未然に防ぎ、万一、事件・事故が発生したときは、適切かつ迅速に対応し、被害を最小限に抑えることが大切です。また、事件・事故・違反の再発防止と活動の再開に向けた対策を講じてください。

競技会場でも、練習場でも、常に周囲に気を配り安全を確認してからプレーする。安易な行為が、重大事故につながります。危険行為はご自身が注意するだけでなく、他の人の行為も勇気をもって注意することです。

※責任者(指導者・役員)の注意指導に対して従わない場合は禁止とか停止の処置を行うこともあります。アーチェリーを愛好するすべての人が「他人に迷惑をかけない」という最低限のマナーを守るよう自戒して活動してください。

Ⅱ.危機管理対応マニュアルの作成の必要性について
危機管理

会員が危機管理について高い意識と正しい知識を共有し、その上に立って、早期に危険を発見し、活動中に関して生じる事件や事故そのものを防止し、あるいは、その被害を最小限に食い止めるための措置と前後対策に対するものです。

管理の原則

迅速な対応と状況把握、的確な判断、報告が重要です。

基本的な体制と対応

会員の生命の尊重、人権の尊重を考えて対応する。

関係する支部・学校・団体を中心として体制を確立し、全会員の共通理解のもと、共同で対応に当たることを目指します。

Ⅲ.緊急時の対応について(参考例)
目的
  1. 緊急時において、会員及び関係者の安全を確保する。
  2. 危機に対して適正に対応し、会員と関係者の信頼関係を確保する。
  3. 本連盟に対する社会的な信用や信頼を確保する。
危機に対する具体的対応(基本)
事故発生時
  1. 事故発見者:最寄りの関係者(会員・責任者)に通報
  2. 通報の受けた人は現場に急行、必ず複数で対応
  3. 救急処置【緊急時】:保健室(または、休憩室)→医師or救急病院
  4. 現場での事態収拾【緊急時】→警察署
  5. 加害者の沈静化
  6. 他の会員の指導(群集行動の制御等)、応急対応

重要な決まり:必ず複数で対応すること。

情報収集・整理
  • 現場の責任者・同席会員(総括・調整)【必要時】→警察署
  • 発生時対応者【必要時】→病院
  • 現場の管理責任者(管理者)【必要時】→家族・(保護者)への連絡
報告と指示の流れ

発見者―同席会員―現場の管理者・顧問―支部協会(連盟)―本連盟

関係機関との連携【必要時】→支部協会(連盟)・学校・本連盟

対応・指導案の検討

会員の所属団体:状況により→支部協会(連盟)・本連盟(必要に応じて病院、警察と連携)

会議:状況説明、対応・指導方針説明、協議、責任者の指示

具体的な対応と指導について
  • 関係会員の指導、関係会員の家族(保護者)との連携
  • 病院・警察、関係機関との連携
問題の背景分析
  • 今後の対応方針検討
  • 未然防止のための態勢づくり
Ⅳ.具体的対策について
安全対策

各団体は危機対応マニュアルの整備や事故発生時の緊急・救急対応図を作成することが求められます。

安全指導の徹底
  1. 会員(アーチェリー競技者)に対し、定期的な安全指導講習等を実施する。合わせて、審判員対象の安全講習会を開催する。
  2. 毎年「9月開催される大会」開催前後を安全月間とし、事故を風化させないために各加盟団体で安全に対する指導・点検を行う。(競技会等を活用し会員の安全意識の高揚を図る)
指導者・審判員
  1. いかなる場所でも「重大な事故につながる恐れを認識」し、安全管理の徹底を図る。
  2. 違反者や安全を脅かす現場を確認したら速やかに適切な指示・指導を行う。
  3. 危険防止に関して相互に連携をとり情報を共有し防止に努めなければならない。
  4. 技術の向上と共に豊かな人間性を涵養する。
  5. 重大な違反行為に対しては厳重なる処置をもつて迅速に対処する。
  6. 危機を予見・防止し、回避することのできる事前の準備をしておく。
  7. 運営・対処・処置等によっては重大なる責任を負うことを自覚しなければならない。
安全管理対策として行う事項
  1. 健康管理、及び精神的負担の軽減につとめる。
  2. コーチ・顧問・指導者の役割等の周知徹底を図る。
  3. 会員・部員を対象に安全講習会等(熱中症、トレーニング、練習計画、救急法等)を実施し、安全管理意識の高揚を図る。
  4. アーチェリー練習場の修繕等を迅速に行い、安全面の強化を図る。
  5. 施設使用等の安全対策の周知徹底を図る。
  6. 事故等が発生した場合における緊急連絡網の整備を図る。
児童・生徒・学生等の指導における基本的な留意事項
  1. 競技会参加も含め会員の傷害保険等への加入を進める。
  2. 会員の毎日の健康状態を観察し、定期検診の結果を含め心身の状況を把握する。
  3. 日頃から練習場所、器具、用具などの安全管理に配慮し、会員に安全点検、整備を定期的に行わせる.
  4. 事故、けが発生時の対応(手順、連絡網等)を明確にし、簡単な応急手当を心得ておくと共に部員には、健康・安全に対する意識を高め、自身の健康管理につとめさせる。
  5. 安全に練習するためのマニュアルを作り練習前、活動中、終了後の事故防止を徹底させる.
Ⅴ.競技ルール違反・重大なる違反(失格)について
競技規程より抜粋 確認用(資料)
第211条(行射の管理と安全)

ディレクターオブシューティングの任務は次のとおりとする。

1.必要と判断した場合、あらゆる適切な安全策を設けて実行する。

7.競技者等の失格

競技委員長または審判長は、次の各号に該当する競技者等に対して、その競技会における失格を宣言することができる。

  1. 不正な手段で高い得点を挙げたと認められたとき。
  2. 大会の秩序を乱し、もしくは審判員の指示または制止に従わず、または故意に無視したと認められたとき。

【得点記録員は、その矢を所有する競技者の呼称にしたがって記入され、その標的の他の競技者は、呼称される矢の得点を確認してスコアが正確であることについて責任がある。

同一競技者の所有する矢が3本(場合によっては6本)、または同一チームの矢が6本を超えて標的またはシューティングレーン内の地上で発見されたときには、得点の低い方から3本(場合によっては6本)の矢の得点のみが記録される。競技者またはチームが指定本数を超えての発射を繰り返した場合には、失格とする。】・・・その他競技規則参照

具体的対策について
審判員
  1. いかなる場所でも「重大な問題につながる恐れを認識」し徹底を図る。
  2. 違反者や安全を脅かす現場を確認したら速やかに適切な指示・指導を行う。
  3. 重大な違反行為に対しては厳重なる処置をもつて対処する。
  4. 重大な違反を発見したら速やかに近くの審判員に連絡し事実確認を複数で行う。
  5. 速やかに競技委員長・審判長に報告する。
    内容によっては、競技の進行を止める覚悟も必要となる。
審判部門の業務

競技規則が守られているかどうかを監視し、競技中に起きた問題について処理できない場合は、迅速に競技委員長・審判長に報告し、指示を受けてから処理にあたること。

  1. 競技規則を遵守して公正な競技運営を行うこと。
  2. 競技者の使用する用具の検査及び使用時における確認を行うこと。
  3. 競技者の得点記録の監督、指導及び得点の判定・確認を行うこと。
  4. 競技の進行に関する業務及び付帯する業務を行うこと。
  5. 審判は、業務を公正かつスムーズに進行するために存在することを認識しておくこと。
  6. 全ての事柄(裁定・判断を下したとき、注意等を行ったとき)を「審判メモ」に記載しておくこと。(異議申立の資料となるため)
日常的に審判員・役員等で講習会や情報交換を行い競技運営に努める必要がある。
Ⅵ.作成のための資料・参考例として【資料1】
事故災害発生時の救急対応の参考例
重症度の判断と対応
  1. 発見者は、事故の症状が軽ければ、室(人と接触のない場所)に運ぶ。重症と思われるときには、その場において、責任者に連絡する。可能な場合は他の会員が連絡する。
  2. 救急車を要請するか。担当した者は判断をする。
  3. 緊急度が低ければ家族・(保護者)と連携し、希望する病院に移送し来てもらう。
  4. 希望する病院がない場合は、近くの病院で治療を受ける。
    ※出来る限り現場写実を撮影しておく。
救急車要請のめやす
  1. 大量出血
  2. 呼吸停止
  3. ショック状態
  4. 意識不明
  5. 頭部・頚部・脊椎・損傷などの疑い(その場を動かさず救急処置をしながら、医師・救急隊の到着を待つ)
救急車の呼び方
  1. 局番なしの「119」
  2. 「救急車をお願いします」
  3. 現場の名称・所在地・電話番号を言う
    ○○○○○○○○○○○○○です。
    住所は○○○市町村○○○○○○です。
    電話番号は○○○-○○○-○○○○です。
  4. 傷病者の人数・性別・年齢・事故の状況を簡単に伝える。
  5. 救急車到着までの予定時刻とそれまでに必要な処置方法を聞く。
    教員複数名を正門に配置して、到着誘導を指示する。
  6. 救急車到着までの観察事項・処置事項を救急隊員に引き継ぐ。
  7. 救急車に1名以上関係者(成人)が同乗する。
    (連絡用の携帯電話持参)残っている会員に番号を知らせておく。
  8. 搬送先に家族・(保護者)が到着するまで対応する。
  9. 家族(保護者)に状況報告を行い、引継ぎが可能なら帰宅する。
    生死にかかわる重症の場合は経過を見守る。(連絡は定期的に行う)
救急車到着までの処置
  1. 救急処置、心肺蘇生、止血
  2. 適切な体位
  3. 保温など・症状によりあまり動かさない
発生時の対処の参考例【資料2】
施設・設備

事故原因となった設備や弓具等の修理・点検設備や弓具等により傷害が発生した場合は、直ちに使用を停止し、必要なら立ち入り禁止としてください。また、事故発生の要因(設備や弓具などの傷・構造上の問題、使用方法における問題など)を分析し、結論が明らかになるまでは傷害の原因となった設備や弓具は使用しないこととし、破損した設備や弓具は直ちに修理を依頼してください。また、事故発生時の状況等を詳細に記録し、原因究明してください。

組織
急病・傷害発生時の指導者等の役割分担

事故が発生した場合には、迅速な対応が行えるように普段から会員・指導者等が共通理解を持ち、体制を整えてください。

具体的には、傷害の発生時には、直ちに応急手当を実施すると同時に他の会員・指導者等に連絡を行ってください。

会員・指導者等は、軽度の日常的な傷害だけでなく、大出血、呼吸停止、心臓停止などの重篤な種々の状況に対する応急手当の知識も求められます。

例えば大出血の場合には、心肺蘇生法の前に、負傷部位を直接圧迫したり、負傷部位より心臓に近い箇所を縛ったりして止血します。

また、意識状態、呼吸状態、循環のサインなどを観察し、呼吸停止の場合には人工呼吸を、心臓停止の場合には人工呼吸と心臓マッサージを併せて行います。

さらに、けがの状態や程度により医療機関を受診する必要性の有無を判断します。必要ならば、応急手当を始めるとともに、躊躇なく119番通報し救急車を要請します。その際、場所、目印、連絡先、通報者名、事故の状況、負傷の状況や人数等を落ち着いて連絡してください。

負傷者を搬送した後は、他の会員・指導者等に依頼し、残った会員たちへの対応に配慮するとともに、搬送先医療機関の所在地や連絡先についても把握し、保護者へも連絡してください。

事前に、地域における医療機関の所在地、連絡先、診療科目や診療時間を把握しておく必要もあります。

医療機関を受診しないごく軽傷の場合でも、直接あるいは連絡帳などで家族・(保護者)に必ず報告し、帰宅後発生するかもしれない異常についても観察することを依頼してください。

状況の確認と記録

事故発生時には、発生時刻、発生状況、応急手当実施の有無とその内容を、時間経過を追って記録してください。

また、家族・(保護者)が医療機関に同行しなかった場合は、受診先の医療機関名、診療科目、担当医師名、けがの程度の説明や処置内容、帰宅後の処置の必要性の有無とその方法、薬の服用の有無と飲ませ方、次回受診の必要性の有無と日時等を家族・(保護者)に報告してください。

同時に事故発生時の状況を正確に実施機関に報告し、事故記録簿を整理しておくことが必要です。

加盟団体・支部協会(連盟)は、会員が安心して練習でき、安心して競技会や部活動を行う安全な場所と環境でなければならない。しかし、ときとして安全を脅かす事件・事故が発生する。そのようなときに備えて、適切かつ確実な危機管理体制を確立することです。